その仕事、自分で選択した仕事ですか?誰かから押し付けられた仕事ではないですか?~「エッセンシャル思考」のレビュー

ビジネス書

こんにちは。マチ弁のワタルです。

今回紹介するのは、「エッセンシャル思考」という本です。20万部以上売れているロングセラーですね。

本書の結論。「エッセンシャル思考」とは、ひとことで言うと、

自ら重要なことだけを選択し、そこに自分の時間とエネルギーを集中すべし

ということです。

「そんなのあたりまえじゃん。別に新しくないじゃん。」

と思った方、そのとおり。あたりまえのことです。でも、実践するのって、意外と難しくないですか?

世の中には情報があふれています。インターネットを通じて、私たちは簡単にいろんな情報にアクセスすることができますよね。

そして、私たちは、世の中には、ありとあらゆる仕事やチャンスが転がっていることに気づかされます。

その多くは悪くないものだし、かなり魅力的なものも少なくありません。しかも、「全部手にいれよう。」、「好きなことは全部やろう。」という考え方が世の中にあふれています。

そのような世の中で、私たちは忙しい日々にもっと多くの活動を詰め込もうとしていまいがちになっているのです。

「あれもやってみよう。これもやってみよう。」とするうちに、わたしたちは、方向性を見失っているかもしれません。

いかがですか?心当たりがある方もいるのではないでしょうか?

つまり、現代社会は「エッセンシャル思考」を実践しにくい世の中になっているということです。

本書では、「エッセンシャル思考」を実践するために次の3つの技術が解説されています。

見極める技術

捨てる技術

しくみ化の技術

順番に見ていきましょう。

見極める技術

自ら重要なことを選択するためには、何が重要かを見極める必要があります。

ここで失敗すると、重要でないことに自らの時間とエネルギーを投入することになり、大変な損失になってしまいますよね。

著者はここ慎重にやれと説きます。

非エッセンシャル思考の人はあらゆる話に反応し、何でもとりあえずやってみる。だから多くのことに手を出すが、すべて中途半端な結果しか得られない。

これに対してエッセンシャル思考の人は、何かに手を出す前に、幅広い選択肢を慎重に検討する。そして「これだけは」ということだけを実行する。行動に移す数はすくないが、やると決めたことについては最高の結果を出す。

本書では、見極める技術として、次の5つの技術を解説しています。

・孤独・・・考えるためのスペースを作る
・洞察・・・情報の本質をつかみとる
・遊び・・・内なる子供の声を聴く
・睡眠・・・1時間の眠りが数時間分の
成果を生む
・選抜・・・もっとも厳しい基準で決める

 

最初の4つはそれほど珍しい内容ではないので、最後の「もっとも厳しい基準で決める」という技術を紹介します。

これは、要するに選択する基準を作って判断するというものです。

例えば、新しいことに取り組む際、

①やりたいか?
②スキルアップにつながるか?
③半年以内に収益化できるか?
④その後の収益が見込めるか?
⑤社会の役に立つか?

という基準で評価し、すべてを満たすものだけに取り組む,というような方法です。

ここで重要なことは、「もっとも厳しい基準で決める」ということです。
「4つ満たしているから、まあ、いいか」という判断はダメです。

いくつか判断基準を持っているという人もいると思います。でも、結構、妥協して判断していた人も多いんじゃないでしょうか?

でもそれではダメだそうです。妥協してはダメだというのが本書の教えです。

捨てる技術

自ら重要なこと選択したら、次は「やらないこと」を明確にして、それらを切り捨てる技術が必要となります。

上手に切り捨てることができないと、重要なことに時間とエネルギーを集中することができませんよね。

著者は捨てることの難しさに理解を示しつつ、捨てることの重要性を強調します。

捨てるべきものを問うとき、自分の優先事項がはっきりと見えてくる。自分の本当の使命が明らかになり、個人だけでなく組織全体のために最高の仕事ができるようになる。

仕事や人生の決定打となるブレイクスルーは、不要なものを切り捨てることから始まるのだ。

本書では、捨てる技術として、例えば次のような技術を解説しています。

・目標・・・最終形を明確にする
・拒否・・・断固として上手に断る
・損切・・・過去の損失を切り捨てる
・境界・・・面倒くさい人たちと一線を画す

 

この中で、私が興味をもったのは、「損切」の部分です。

私たちには、すでにお金や時間を費やしてやってきたことをやめられない性質があります。

これは、心理学では、「サンクコスト(埋没費用)バイアス」と呼ばれています。

続けるのは無駄だと思っても、「ここでやめたら今まで費やしてきたお金や時間が無駄になる」と思うあまり、それをズルズルと続けてしまう心理のことです。

たとえば、見に行った映画がひどくつまらないものだったとしても、「支払ったチケット代が無駄にる」と考えて、最後まで映画を見続けてしまう、というような経験はありませんか?

こういう場合、私たちは時間とエネルギーを費やすことが無駄だと思っても、なかなかそれを切り捨てることができないのです。

本書では、そのような場合の考え方が解説されています。

まず、「もしもまだお金や時間を全然費やしていなかったら、今からこのことにお金と時間を費やすか?」と自問自答します。

それが「NO」なら、思い切って損切しましょう。

そして、「今これをやめたら、何にお金と時間を使えるだろう?」とポジティブに考えましょう。

こうすることで、「サンクコストバイアス」から上手に逃れることができるということです。

なんか、コレって、こんまりさんの「人生がときめく片付けの魔法」の考え方に似てますよね?「捨てる」という点では共通点がありますもんね。興味のある方は、こんまりさんの本も手に取ってみてください。

しくみ化の技術

さて、3つ目はしくみ化の技術です。いったん重要なこと選択したら、あとは自分の時間とエネルギーをそこに集中させるだけです。

ただ、日常生活は想定していないことが起こって、予定通りにいかないことが多いですよね。

そういうときには、「今日は想定外のことが起こったから予定通りにいかなかったけど仕方がない」って思ったりしますよね。

でも、こういうことが何回かあると、だんだんと重要なことに時間とエネルギーを集中させるのがおっくうになったりします。

そして、それを続けるには、努力や根性が必要になります。

努力や根性に頼ることはとても危険です。人の脳は不快なことは続けられないようにできています。継続するのに必要なことは習慣化することです。

このあたりのことは、「習慣が10割」という本の要約記事も書いていますので、興味のある方はそちらも読んでみてください。

さて、著者はしくみ化の重要性を説きます。

「いったんやるべきことを決めたら、それを無意識に実行できるようにしておくのだ。クローゼットがあふれ返るまで放置してから苦労して片付けるのでは、すぐにいやになる。そうではなく、きれいになるしくみを日々の行動に組み込んで、散らかることを未然に防いだほうがいい。

人はラクをしようとする生き物だ。だから、何の苦労もなくスムーズに正しい行動ができるようにしておこう。

本書では、しくみ化の技術として、例えば次のような技術を解説しています。

・バッファ・・最悪の事態を想定する
・削減・・・・仕事を減らし、成果を増やす
・前進・・・・小さな一歩を積み重ねる
・習慣・・・・本質的な行動を無意識化する

 

「バッファ」というのは、例えば、余裕をもったスケジュールを組むということです。思いもよらないことは起こるものだと考え、あらかじめ想定外のことが起こっても予定通りの行動ができるようなスケジュールを組むということです。

「削減」というのは、成果を上げるために障害となる要素、ボトルネックを削除する、ということです。

例えば、仮にあなたのボトルネックが、完璧にしないと気がすまない性格だったとすれば、まず、あなた自身が「完璧じゃないとダメだ」という考え方を捨てて、「完璧をめざすより終わらせることが大事」という考え方を身につけるということです。

「前進」と「習慣」というのは、まさに「習慣が10割」という本の要約記事で詳しく触れているので興味のある方はそちらを読んでみてください。

堀江隆文「多動力」との違い

ところで、皆さん、堀江隆文さんの「多動力」という本をご存じでしょうか?

この本で堀江さんは、次のようにおっしゃっています。

一つの仕事をコツコツとやる時代は終わった。

これからの時代は「多動力」こそが最も必要な能力だ。

サルのようにハマり、鳩のように飽きよ。

一見、「エッセンシャル思考」とは真逆のように感じられますよね?

「エッセンシャル思考」では、何が重要かを見極めるために、情報を集めて考え抜き、「もっとも厳しい基準で決める」という技術が紹介されていましたね。

これに対して、「多動力」では、何でもいいから興味のあることに「サルのようにハマってみよう」、80点くらいにたどり着いたら「鳩のように飽きよ」と説明されています。

要するに、「エッセンシャル思考」では、何をやるのかを選択する際に考え抜くことが推奨されているのに対し、「多動力」では、深く考えることなく興味があるものを選択することが推奨されています。

両者の考えは、選択する際の考え方こそちがっていますが、それ以外の「捨てる」「しくみ化する」という部分について非常に似ています。

これは、対象としている読者が異なるからではないかと思います。

「エッセンシャル思考」が多忙過ぎて自分が本当にやりたいことをできていないという人に向けて書かれたものです。やっていることを削減するための考えですね。

これに対し、「多動力」の方は、さほど多忙ではなく、何か行動しなければいけないと思いつつも行動に移せないという人に向けて書かれたものです。行動を促すための考えですね。

この違いが、選択する際の考え方の違いにつながっているのだと思います。

どちらも、有用な考え方だと思いますが、だれにでも当てはまる考え方ではなさそうですね。

皆さんも、自分がどちらのタイプなのかを自己分析した上で、「エッセンシャル思考」と「多動力」のどちらを参考にするのかを考えてみてください。

興味がある方はどちらも面白いので、ぜひ、手に取って読んでみてください。

ではまた。

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